高分解能角度分解光電子分光装置を建設し、分解能12meV、最低測定温度8Kを達成する事に成功した。本装置を用いて、興味ある様々な物質群の電子構造を非常に高いエネルギー分解能で研究し、以下の知見を得た。1.銅酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_8の超伝導ギャップの直接観測に成功し、ギャップがdx^2-y^2の対称性を持つことを見出した。2.銅酸化物高温超伝導体La_2CuO_4と同一の結晶構造を持ちながらCuO_2層がRuO_2層に置換された非銅系超伝導体Sr_2RuO_4で、銅酸化物高温超伝導体で見出されていると同様な「拡張型ファンホ-ブ特異点」が存在することを見出した。3.セリウム化合物CeB6の近藤ピークの結晶場分裂によるサテライト構造を初めて観測することに成功した。4.セリウムモノプニクタイトの低温における常磁性-反強磁性転移に伴う電子バンド構造の変化を直接観測し、転移の起源について研究した。ブリルアンゾーンのΓ点にホール的フェルミ面があること、X点に電子的フェルミ面があることを見出し、さらにそれらの体積が磁気相転移の前後で大きく変化することを観測した。5.ウラン化合物超伝導体UPd_2Al_3のフェルミ準位近傍に2種類のU5f電子が存在し、温度によって両者の存在比が変化することを見出した。6.低次元有機金属伝導体DCNQI-Cu化合物を超高真空条件下で合成し、その金属-絶縁体転移に伴うパイエルスギャップの開閉を直接観測することに成功した。また金属相でのスペクトルの解析から、フェルミ準位近傍の電子はTomon aga-Luttinger液体を形成していることを見出した。7.Verwey転移を示すFe_3O_4についてその転移近傍での精密な光電子スペクトルを測定し、フェルミ準位上でのギャップの開閉を観測することに初めて成功した。
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