研究概要 |
研究代表者らによって,東北日本弧の漸新世以降の火山岩類のSrおよびNd同位体組成のデータに基づき、東北日本弧の上部マントルには同位体的に2つの異なるソースが提唱されている。一つは同位体的に非枯渇的な島弧リソスフェア性マントルで、もう一つは同位体的に枯渇的したソースで15Maあたりに背弧側へ上昇したアセノスフェア性マントルである。これらの斬新世以降の玄武岩のHFS元素(Nb、Ti、Y、Zr)どうしの比の時間的変化を検討した結果以下の点が明らかとなった。 (1)島弧リソスフェア性マントルに由来する玄武岩のZr/Y比は35Ma以降時間とともに減少するのに対して、Ti/Zr比は増加傾向を示す。また,各時代の玄武岩の中で最も低いZr/Y比を有する玄武岩を2Nb-Zr/4-Y図で検討したところ,島弧リソスフェア性マントルマントルは35Maから第四紀に向かって,NbとZrに富む側からこれらの乏しくなる側にほぼ直線的に変化することが明らかとなった.これらの事実に基づき、島弧リソスフェア性マントルは、斬新世以降、HFS元素にエンリッチしたOIBソース的なものからN-MORBソース的なものを経て現在のHFS元素に枯渇したソースに変化してきたことを議論した。このような,島弧リソスフェア性マントルにおけるHFS元素比の経年変化は,マントルからの玄武岩質マグマの継続的な生成によって生じたものと考えられる. (2)一方,アセノスフェア性マントルに由来する玄武岩のこれらの比は上記玄武岩とは異なる変化パターンを示す。しかし,これらの玄武岩のデータが不足しているので,アセノスフェア性マントルのHFS元素の経年変化の詳細は今後の研究の蓄積によって明らかになるであろう.
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