研究概要 |
本研究の目的は,島弧形成過程の最早期を表わす小笠原諸島と成熟した島弧である日本列島の岩石を比較検討することによって,海洋地殻から如何にして組成的に異なる大陸地殻が形成されたかを知ることにある. 1.小笠原諸島の岩石に関して,本年度は特に島弧ソレアイトの産出が知られている母島の調査を行った.その結果,母島には島弧ソレアイトとともに,高マグネシア安山岩を含むカルクアルカリ系列の火山岩も存在することがわかった.これは,父島のボニナイトと母島のソレアイト系列岩が,含水量の差により漸移的に移り変わることを示唆する. 2.大陸縁辺部に特徴的に産するサヌカイト類の研究では,愛媛県北部の瀬戸内火山岩の研究がまとまった.中央構造線北の高縄半島では岩頚・岩脈として産し,高マグネシア安山岩が多い.一方,南の石鎚山周辺では大規模火砕流や深成岩が存在し,分化岩が多い.しかし,その親マグマは高マグネシア安山岩であることを明らかにした.また,Kに富み古銅輝石をもつ高マグネシア安山岩マグマは、融解程度17%,含水量0.6%の条件下で生じると、初めて定量的に見積もった. 3.九州北西部の北松浦玄武岩中に発見されたNbに富む古銅輝石安山岩は、プレート内アルカリ玄武岩中に挟在され,NbのほかRb・Kに富む一方では,Sr・Baに乏しいことが確認された.その成因として,上昇するプレート内玄武岩マグマと含水マントルの反応により生じた,という可能性が強くなった. 4.琉球列島西表島の古銅輝石高マグネシア安山岩はLILEに乏しい特異なものであることがわかった.特にBa含有量はMORBと等しい.無水・極端な低圧下で生じたものであるかもしれない.
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