研究概要 |
本研究の目的は,島弧形成過程の最早期を表わす小笠原諸島と成熟した島弧である日本列島の岩石を比較検討することによって,海洋地殻から如何にして組成的に異なる大陸地殻が形成されたかを知ることにある. 1.小笠原諸島の火山岩の研究がほぼまとまった.父島の火山岩類をボニナイト系火山岩類,三日月山火山岩類,ジョンビ-チ火山岩類に,母島のそれをカルクアルカリ系火山岩類,ソレアイト系火山岩類に分けた.RbとKを除くインコンパチブル元素はこの順に増加し,ボニナイトは最も枯渇しているが最も水に富む起源マントルから導かれた,と結論した. 2.静岡県瀬戸川オフィオライトの高マグネシア安山岩は,Ti,P,Nb,ZrなどのHFS元素に乏しいことにおいて,同地域のソレアイト質玄武岩やアルカリ質玄武岩と区別され,伊豆小笠原弧以外の日本列島では唯一のボニナイト型高マグネシア安山岩であることを明らかにした. 3.大陸縁辺部に特徴的に産するサヌカイト類の研究では,銚子半島,美濃加茂市,二上山,九州北東部,北西九州,菊池市北部,肥薩火山岩,久米島,西表島の高マグネシア安山岩および古銅輝石安山岩の微量元素組成を明らかにした.西表島古銅輝石安山岩を除いて,いずれもLIL元素が高く,その生成に水が関わっていたことを示唆する.また,Cr・Niが未分化玄武岩と同様に高いことがわかった. 4.長崎市牧島からプレート内玄武岩を発見した.また,近接して高マグネシア安山岩も見い出された.プレート内玄武岩のNb含有量は28.8〜40.9ppm,一方,高マグネシア安山岩のNb含有量は9.2〜9.6ppmであるので,同一起源物質・同一マグマから由来した可能性はうすい.プレート内マグマと沈み込み帯を特徴づける高マグネシア安山岩の共存する地質環境が興味深い.
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