研究概要 |
本研究は、過去15万年間の黒潮変動に伴う日本列島南岸沖合いの海洋古環境変遷を復元することを目的として、伊豆半島沖北緯33度から29度までの間でほぼ40分間隔に採取した6本のピストンコアについて学際的総合研究を実施している。 まず最初に、これらの海底コアが過去15万年間の連続的な堆積物から構成されているかどうかを明らかにする必要があった。そこで、これらのコアに含まれる浮遊性有孔虫の一種について、予察的に有孔虫殻の酸素・炭素同位体比を測定した。その結果、これらのコアの一部には乱泥流堆積物を介在するが、概ね連続的に堆積していることが分かった。そして、長いコアの最下部は15万年前まで達しているが、短いコアでは過去3万年前までしか達していないことも明らかになった。次に、これらのコアについて得られた帯磁率のカーブや広域火山灰の層準に基づいてコア間の対比を行ったところ、6本のコア間である程度の対比が可能となった。その対比に基づくと、堆積速度は遅いコアで5cm/1,000年、早いコアでは10cm/1,000年まで変化していることが認められた。従って、6本のコアについて各種の分析を同様な精度で行うには、これらの堆積速度に基づいて判断することができた。現在のところ、乱泥流堆積物の比較的少ない3本のコア(St.14,19,20)について、有孔虫殻の酸素・炭素同位体比、粉末X線回折による鉱物組成の同定、浮遊性有孔虫の群集組成を中心に解析を進めている。
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