研究概要 |
本年度は,前年からの継続で雲仙普賢岳噴出物についての鉱物組織と噴火過程の関係についての検討をおこなった.特に,昨年度末に納入された急速冷却超小型高温高圧処理(HIP)装置を用いて普賢岳噴出物石基中の角閃石の安定領域を実験的に決定した.これまで,St.Helens火山についてRutherford and Hill(93)が800-900℃での角閃石の低圧安定領域が100MPa以上であることを示しているが,雲仙普賢岳試料については,50MPa(800℃),80MPa(871℃)と,より低圧まで安定であることが判明した.これは系の組成がよりSiO2に富み,K/Na比が大きいことによるのと思われる.雲仙普賢岳試料では石基中に角閃石が1-3vol.%認められ,火砕流を発生させるような自爆性の強い溶岩の特徴であると考えられるが,その晶出条件が2km以深であることが判明した.この噴火については,現在溶岩流出の流体力学的モデルの検討をおこなっており,それに基づいた,低温減圧(発泡・結晶作用)のシミュレーション実験をHIP装置を用いておこなう予定である.雲仙普賢岳噴出物については,斜長石累帯構造の記載と噴火機構,気泡組織と脱ガス機構,含水量と溶岩の自爆性等についても検討した結果を論文としてまとめた. 1991年のピナツボ噴出物についても,斜長石累帯構造の検討から,噴火直前のマグマ溜まりでの2種のマグマのガス成分の移動と噴火にともなうマグマ混合の証拠が得られ発表した.さらに,噴火におけるマグマの発泡・破砕過程を検討するため,鬼界カルデラのアカホヤ噴出物の火山形態分析をおこない,火砕流中に発泡度の低い粒子が集中していることを発見した.また火山爆発についての爆発エネルギーと熱エネルギーの関係について5桁以上に渡って冪の関係があることを見い出し,発表した.
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