研究概要 |
本年度は,雲仙普賢岳1991年噴出物中の角閃石および斜長石斑晶の累帯構造の成因についての検討,富士火山1707/864年噴出物中の斜長石の累帯構造とその生成条件に関する高温高圧実験,および高松クレーター噴出物の岩石学的検討のとりまとめをおこなった. 雲仙普賢岳1991年噴出物中には石基角閃石が含まれ,相平衡実験からそれが約100MPa以上(4km以深)で晶出したことが明かにし,また,塩素濃度の測定から石基角閃石がマグマの発泡脱ガスにより生じたものであることが示された(印刷中).また,同噴出物中の斑晶角閃石の累帯構造を記載し,コアでの組成変動が,マグマ混合で生じたリムでの逆累帯構造の組成変動とは異なった元素挙動を示し,マグマ溜まりでの発泡脱ガス/気相注入の繰り返しで反復累帯構造が生じたことが示された(学会発表).共存する斜長石斑晶の反復累帯構造も同様の揮発性成分の変動により生じたと考えられる. 富士火山1707噴出物について,約2kbで含水溶融実験をおこない,斜長石のAn組成とメルトのH20量の間に,An=6^6(H2O)+68の関係があることを明らかにした.1707年玄武岩質マグマ中の斑晶斜長石コアは An85-92のものが多く,これから母マグマの含水量は3-4%と求まる.一方,ほぼ同じ全岩化学組成を有する864年噴出物中の斜長石はAn70-80のコアが一般的に認められ,それらけ逆累帯構造のリム(An75-85)に取り囲まれる.このことから,864年玄武岩マグマはいったん,中央火道から側方に貫入して脱ガスしたマグマから斑晶コアが晶出し,その後新たなマグマの貫入混合を受けてリムを晶出し,さらに側方へ貫入し地表面に当たったところで噴火を生じたものと考えられる(学会発表予定).高松クレーター噴出物中のガラスの分析をとりまとめ,論文として公表した.
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