研究概要 |
1. 開発中のSIMS装置の二次イオン検出系および質量分析計部を調整しその特性を把握するとともに,市販のステンレス・マグネシウム・アルミニウム試料からの二次イオンの質量スペクトルを記録した。試料から放出され引き出し電極に導かれた二次イオン電流は約4×10^<-9>A,これを整形後主スリットにより制限されて電場内に到達した電流は約5×10^<-12>A,エネルギー分離後では約5×10^<-13>Aであった。磁場による質量分離についてはほぼ当初の設計値通り質量数50付近で約4mmの質量分散であることがわかった。Mg試料については^<25>Mg/^<24>Mgおよび^<26>Mg/^<24>Mgピーク高比を測定することができ,それぞれ0.151±0.011および0.140±0.012が得られた。主スリット幅,エネルギースリット幅,コレクタースリット幅ともに0.5mmを使用し,低質量分解能のままとしているため,^<25>Mgと^<26>Mgにはhydride ionの寄与が重畳している。この寄与(約2.5%)を差し引く処理を施せば文献値とよい一致を示した。 2. 上記調整を続ける一方,大阪大学のSIMSを用いてAllende隕石中のmatrix部分についてLi同位体比測定を行い,実験室標準試料のリチア輝石およびリチア雲母のそれと比較検討した。この分析で生じた試料表面のイオン衝撃によるクレーター観察は本研究費により調達したSEMを用いて行い,クレーターの楕円形状とその直径が約20μmであることが確かめられた。また,隕石matrixでは^7Li/^6Li比が実験室標準に比べて大きく変動することおよび低い側へのずれを示す局所の存在が認められた。ただし,これらの同位体比変動を示す鉱物を同定できるまでには至っていない。
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