研究概要 |
最近,始原隕石中に原子太陽系星雲の凝集以前から存在していたと推定され,それが星雲中に取り込まれ,その後何の変化をも被ることなく現在に至っているpresolar grainが発見されるに及んでいる。Presolar grainの発見およびその中に含有されている希ガス等の大きな同位体異常の報告によれば,これらの粒子はミクロンサイズで,SiCやダイヤモンドなどが多いが,なかにはコランダムなども見出されている。 本研究では,新たに考案・試作した「試料直接充填法表面電離型質量分析系(DLMS)」を用いて,現在のところではpresolar grainの存在が定かにされていないAllende始原隕石のマトリクスから取り出した微粒試料(1回の測定あたり訳1mg)について,Li,Mg,Siなどの同位体異常の有無を確認するための実験を行った。その結果,LiおよびSiについては,地上鉱物実験室標準試料同位体比との差異は観測されなかったが,Mgについては,7試料のうちの1つに約30‰の^<26>Mgの過剰と思われる同位体異常が確認できた。種々の地上鉱物試料で確認したMg同位体比測定に対する再現性は±3‰であり,また,隕石試料分析時に同時にAlの質量スペクトルも観測されていることをあわせ考えると,この^<26>Mgの過剰は,消滅核種^<26>Alの崩壊生成物を検出したものである可能性が高い。しかし,質量スペクトルパターンからは,この同位体異常を示す鉱物が何であるかについては同定できるに至っていない。今後,鉱物種による特性的な質量スペクトルパターンの検出および分類が進めば,EPMA分析が不可能に近い細粒の鉱物種の推定も可能になることが期待できる。
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