研究概要 |
これまでに(e,2e)測定装置は一応の完成をみた。現在得られている主な性能は以下の通りである。 ・励起用電子線特性 1200eV,1μA ・電子分光器エネルギーFWHM 1.8ev(1/4に減速後) ・検出器 10チャンネル、5×5=25チャンネルで同期検出可能 これまでHeの1s、Arの2s,2pなど既知の軌道について結合エネルギースペクトルおよび(e,2e)スペクトルを測定したところ、所期の性能を示していることが確認できた。以上の測定装置の製作と性能の詳細については科研報告第43巻に報告した。 ついでチオエタノール類のHOMOについて(e,2e)スペクトルを測定して運動量分布を得た。同時にいろいろなレベルでのab initio計算(STO-3G〜6-31G*)を行って比較したところ、実測の運動量分布と計算値とは中〜高運動量領域ではよく一致したが、低運動量領域では相違が見られた。これはこの軌道が予測されているよりも分子内に拡がっていることを示している。 現在他のチオアルコール類、硫化水素などについて測定を行い、上記の傾向が他の分子についても当てはまるがどうか検討中である。 また、装置の性能アップとして分解能を更に向上させるため、減速比をより高くすることを試みている。
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