研究課題/領域番号 |
07404034
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志田 忠正 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60025484)
|
研究分担者 |
吉村 一良 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70191640)
百瀬 孝昌 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10200354)
|
キーワード | 量子固体 / 高分解能分光 / 飽和分光 / レーザー分光 / 線巾 / ヘテロダイン検出 |
研究概要 |
凝縮系の分子分光学では、スペクトルの不均一幅による分光情報の消失が常に問題となる。本研究では、凝縮系のスペクトルの不均一幅を除去して、さらに高い分解能の分光を行うため、固体パラ水素マトリックス法と飽和分光法を組み合わせて、固体における超高分解能分光手法を確立することを目指した。この手法を用いると、固相中の分子の振動回転及び電子状態などを気相のそれと比較することができ、その比較から凝縮相における多体相互作用や励起状態の緩和過程の詳細を明らかにすることが期待できる。本研究ではまずスペクトルのシグナル対ノイズ比をあげるため、高周波変調法による光ヘテロダイン検出法による高感度検出システムの作成を行った。その結果、通常の変調法に比べて一桁程度のS/N比の改善が達成された。一方、固体水素中での線幅の原因を探るため、水素分子のQ_2(0)遷移について結晶の条件を変えて線幅の変化を観測した。その結果、線幅の主因はパラ水素中に微量に残存するオルト水素の四重極電場によるシュタルクシフトであることが明らかとなった。オルト水素のほとんど存在しない結晶では線幅が3MNz以下であることが明らかとなり、飽和分光を用いることによって、実際に環境の違いを選別できることが示唆された。そこで現在、飽和分光シグナルの観測を試みている。今後は測定対象として、気相では寿命が短く、観測が困難な不安定分子を固体パラ水素中に捕捉したものにまでひろげ、その高分解能分光を行う予定である。これによって、これらの不安定分子の構造や電子状態に関する新しい知見を得ていく。
|