研究概要 |
1.ホスフェニウム配位子の遷移金属-遷移金属間結合へのmigratory insertion反応 遷移金属-ER_3結合(E=C,i,Ge,Sn)をもつFe,Mo,またはW-ホ-スファイト錯体にルイス酸を反応させると、ホスフェニウム錯体が一旦生成し、その後、14族元素Eと金属との結合の強さによってa)ER_3基のホスフェニウムへの転位(E=C)、b)ホスフェニウムへの転位が抑制(E=Si,Ge)、c)ER_3基上のRのみ転位(E=Sn)などのように、反応様式が変化する。そこで、ER_3基を遷移金属フラグメントに変えた場合にどのような反応が起こるかということには、興味が持たれる。実験の結果、Fe-Fe結合およびMo-Mo結合をもつ錯体では、上記a)のタイプの反応様式をとることが伴った。このことは、転位した金属フラグメントが、SiR_3,GeR_3,SnR_3などの後周期典型金属フラグメントよりもむしろCR_3に近い反応性を示したという点で非常に興味深い結果である。 2.ホスホラン配位子の鉄からシクロペンタジエニル基への転位反応 Cp(CO)_2Feフラグメントに結合したホスホラン化合物の新規合成法を確立し、Fe-ホスホラン結合の性質を明らかにした。そこで、これを踏まえて、Fe-ホスホラン錯体の反応性についても種々の検討を行った。特に、LiN(i-Pr)_2との反応では、ホスホランフラグメントが鉄からシクロペンタジエニル基に転位することを見いだした。 3.アザマクロサイクルに比べて研究の立ち遅れているホスファマクロサイクルのうちで、14員環ホスファマクロサイクルを配位子とするPdおよびPt錯体をテンプレート反応を利用して合成した。そのX線構造解析より、このホスファマクロサイクルのホールサイズはPdやPtのイオン半径よりもやや小さく、そのため錯体形成により環が外側に押し広げられていることが判った。16員環ホスファマクロサクルでは、そのような歪みは観測されなかった。
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