研究概要 |
本年度の研究で、骨格欠損不完全二重立方体型クラスター[(Cp^*Rh)_2Mo_3O_9 (OMe)_4] (1a)の効率的合成法を開発し,その反応を応用することで,新奇骨格を持つダブルブックシェルフ型クラスター(NBu^n_4)_2 [(Cp^*Rh)_2Mo_6O_<20> (OMe)_2] (1b)の合成に成功した.さらに特筆すべきは,クラスター1bが,Cp^*Rh^<2+>や[Mo_2O_7]^<2->と反応してクラスター1aそして面共有三重立方体積層型クラスター[(Cp^*Rh)_4Mo_4O_<16>] (1c)にそれぞれ変換されることである. この変換反応は,クラスター1bが複数の反応活性点となるvalley-site(谷間・溝部分)を持つことによって引き起こされたものである.つまりクラスター1bのMo (1)-Mo (2)-Mo (3)で形成されるvalley-site中の塩基性の高い架橋酸素原子は,むき出しの状態となっており,容易にカチオン性のCp^*Rh^<2+>フラグメントと相互作用し,クラスター1aを与える.一方,[Mo_2O_7]^<2->の場合には,プラスの電荷をもつRh (III)中心がむき出しになっている方向からcavityに近づき,比較的弱いRh-O結合が切断されることでRh原子の配位座が空く.そのRhの空きサイトで新たなオキソモリブデ-トの縮合が進行し,より安定な骨格を持つ1cへと定量的に骨格変換する.現在,北海道大学触媒センターの市川研究室との共同研究により,今回合成したクラスター1bを利用した新しい担持型固体触媒の開発を進めている.
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