本研究では、粘土の単分子膜を介して分子オーダーで制御した分子機能膜を人工的に製作することを目指している。7年度においては、以下の2つの方法によってクロロホルムなどの有機溶媒に分散するような粘土・有機複合体の合成を試みた(山岸、谷口)。(i)粘土を長鎖アルキルアンモニウムによってイオン交換して疎水化した。この方法では粘土のシリケート面が全面疎水基によって覆うことができた。(ii)長鎖アルキル基を有するシラノール化剤によって結晶端の水酸基を反応させ疎水化した。これによると粘土の陽イオン交換能は失われずに粘土の端が疎水化された。得られた粘土・有機複合体を有機溶媒に分散して、水面に展開し単分子膜を得た。得られた膜が真に均一な単分子膜であるかどうかあるいは粘土面の配向の方向などを、表面圧-面積曲線の測定、適当な基板上に積層した多層膜(LB膜)に対する反射赤外吸収スペクトル、X線回折の測定およびAFM観察を行った(山岸、谷口)。さらに原子間力顕微鏡(AFM)による観察によって粘土膜表面の均一性を調べた。その結果LB法による粘土膜は極めて平坦で、粘土単結晶の1層に相当する凹凸(約10A)の範囲で平坦であることがわかった。また微結晶がすきまなく並んでいた。これは通常のキャスト法による製膜に比較して極めて優れていることがわかった。現在この膜を修飾膜にした電極反応を試みている。
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