研究概要 |
平成8年度においては、以下の成果が得られた。 (1)界面反応解析装置によって,液液界面での緩和過程の測定を行った。トルエン-水界面に吸着したテトラフェニルポルフィリン(H_2tpp)のプロトン付加形は、レーザー光(532nm)によって励起され、三重項状態を生成する。この励起分子が溶存酸素によって脱励起される過程を,先の解析装置によって検出した。その結果,脱励起過程は液液界面の水相側で主に起こることを見い出し,その反応速度定数を求めた。 (2)ピリジルアゾ化合物の一つであるピリジルアゾナフトール(Hpan)によるNi(II)の抽出過程において,類似のピリジルアゾ化合物であるピリジルアゾジメチルアニリン(pada)を添加すると,触媒的にNi(II)の抽出速度が増大することを見いだした。これは,液液界面にNi(pada)^<2+>が吸着し,Hpanと反応するために起こることを,高速撹拌法により明らかとした。 (3)ピリジルアゾ化合物であるプロモピリジルアゾジエチルアミノフェノールによるPd(II)の抽出過程において,試薬のプロトン付加形が液液界面に吸着しPd(II)と反応していることを,高速撹拌法により明らかとした。また,抽出錯体の液液界面への吸着挙動を検討した. 平成8年度は,平成7年度に新規購入した界面反応解析装置と,現有機器である高速撹拌装置を用い,ポルフィリン化合物とピリジルアゾ化合物の界面反応性を検討した。更に,液液界面の化学種を同定するために,全内部反射法を用いた分光法(吸収法,蛍光法)や,遠心液膜法を用いた検討も進めている。
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