研究課題/領域番号 |
07404044
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
|
研究分担者 |
小川 浩史 東京大学, 海洋研究所, 助手 (50260518)
小暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
|
キーワード | 海洋 / 細菌群集 / コロイド有機物 / 微生物食物連鎖 / 微小鞭毛虫類 / 海洋有機物 / 懸濁有機物 / 沿岸域 |
研究概要 |
本研究は主に海洋での有機物循環において重要な役割を果たしているコロイド態有機物の動態と微生物食物連鎖との関係に注目して実験室におけるモデル実験と海洋現場での観測との両面から研究を行っている。本年は2年度目であるが、サブミクロンサイズのコロイド粒子の生成機構について大きな研究の進展がみられた。比較的富栄養的な沿岸域から外洋までの測点での、サブミクロン粒子の濃度およびその粒径分布による観測から生物活動の高い沿岸表層では、高い粒子濃度に加えて粒径が0.6-0.7ミクロンに明らかなピークが検出された。このピークは外洋の表層および有光層以下では検出されず、その粒径分布は小さくなると単調に増加するパターンを示した。またこのピークは細菌群集などの生物粒子でないことが、実験的に確かめられた。 一般に海洋での懸濁有機物の粒径分布は、凝集や吸着あるいは溶解などのプロセスが卓越すると指数関数的に粒径が小さいほうへ増加することが知られている。従ってこのことは、この粒径が0.6-0.7ミクロンの粒子は沿岸表層での活発なこのサイズのコロイドの生成が起こっていることを示している。一方実験室でのモデル系において海洋の微生物食物連鎖の中心である鞭毛虫類による細菌捕食によって、多量の0.6-0.7ミクロンサイズのコロイドが生成されることが明らかになった。このコロイド粒子の生成速度は、細菌濃度や鞭毛虫類の数に依存するが、沿岸現場での生成速度を見積もってみると、このプロセスだけで現場のサブミクロン粒子は2-20日で生成/分解されていることになる。これらの結果は微生物食物連鎖がコロイド有機物の動態に大きな役割を果たしていることを強く示唆する成果である。
|