物質からの自然放出の抑制をはじめ、輻射場を一般的に制御するためには、光の波長領域にフォトニックバンドギャップを有する3次元のフォトニック結晶の開発が不可欠である。開発のためのシュミレーション研究として、格子定数がサブミリメートルの単純立方晶の試料をシリコンで作成し、その透過率スペクトルを測定し、有限要素法で計算したスペクトルと比較した。その結果、互に90°でクロスしたエアホール柱からなる、この単純立方晶でバンドギャップが生ずることが判明した。この事実から、この構造が最も作成が容易な光領域の3次元結晶であるとの結論を得た。最新の半導体蒸着・微細加工技術を用いて作成する予定である。理論的には、3次元結晶のフォトニックバンド構造、各バンドの対称性を明らかにした。 一方、2次元フォトニック格子の特性を反映したレーザー発振をはじめて観測した。既有の2次元格子のエアホールを色素溶液で満たし、ナノ秒光パルスで励起することにより、共振器なしで2次元面内でレーザー作用がおこることを見い出した。弱励起の場合には、色素からのスムーズな自然放出光スペクトルが得られるのに対し、励起を強くすると、ピーク波長とは異なった波長位置で幅の狭いスペクトルが成長する。この波長位置は、計算したフォトニックバンド構造の群速度の遅いバンド周波数に対しているため、状態密度の高いフォトンモード(Q値が高い)がレーザー発振していると考えられる。現在詳細に調べている。 次に、バンドギャップ端で状態密度が高くなることを利用して、非線形光学現象の発生効率が増大することを理論的に明らかにした。検証実験を準備中である。
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