希土類元素等の微量元素の存在度並びにSm-Nd法等の放射壊変を利用した同位体系の研究により、大陸地殻の形成及び進化を明らかにすることが本課題の目的である。本年度に得られた主な成果は次の通りである。 1.沈み込み帯における海洋性推積物の付加過程を考える基礎的データとして、島弧のケイ質推積物の微量元素及び同位対比の研究を行った。(1)西南日本外帯及び内帯のチャートは、希土類元素並びに主成分元素の特徴において、中生代三畳記の試料は古生代二畳記の試料よりも、大陸地殻物質の影響が大きいことが判明した。この結果は、二畳記から三畳記にかけて推積場が、大陸地殻により近づいたことを示しており、大陸地殻に付加される推積物の時代変化を考える必要のあることを示している。(2)西南日本外帯のチャートのSr同位体比は当時の海水の同位対比と近い値であり、open seaでの推積が示唆される結果が本研究により得られた。この結果は従来報告されていた、海水よりも明らかに高いSr同位体比を示す西南日本内帯のチャートのSr同位体比の特徴とは大きく異なっている。古生代後半から中生代前半における、大陸地殻および海洋の分布地域を検討する基本的なデータが得られた。 2.西南日本外帯の黒瀬川帯中に分布する二畳系の薄衣式礫岩と考えられている。九州の小崎層の花崗岩質礫について地球化学的・年代学的研究を行った。韓半島の20億年の年代を示す花崗岩質岩石と類似の特徴的な希土類元素パターンを示す花崗岩質岩石の礫が、小崎層に含まれることを明らかにした。しかし、この花崗岩質礫について約2.6億年のRb-Sr参考年代が得られ、先カンブリア紀基盤岩とは直接的な関連はなく、小崎層の推積直前の火成作用により生成した花崗岩に由来していることが示された。
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