希土類元素等の微量元素の存在度並びにSm-Nd法等の放射壊変を利用した同位体系の研究により、大陸地殻の形成及び進化を明らかにすることが本課題の目的である。本年度に得られた主な成果は次の通りである。 1.日本で先カンブリア紀の年代を示す数少ない例である、美濃帯の上麻生礫岩の片麻岩礫について、32.5億年のU-Pb年代を示すジルコンが含まれていることを明らかにした。この32.5億年の値は日本の岩石・鉱物については最も古い年代値であり、東アジアの大陸地殻の形成が始生代中期にさかのぼることを具体的にデータで初めて示した重要な結果である。さらに、この片麻岩中の先カンブリア紀のジルコンは、希土類元素パターンにおいてCeの正の異常を示しており、その程度は古いジルコンにおいて大きくなる傾向があることを明らかにした。このジルコンの希土類元素パターンにおけるCe異常は、大陸地殻における先カンブリア紀の火成作用や変成作用の際の酸素分圧などの条件に制限を与える貴重なデータである。 2.中国大陸の砂漠地域の風成堆積物や黄土の運搬・堆積作用を通しての均質化過程を検討し、中国大陸の上部地殻の平均化学組成の推定の研究を開始した。そして、タクラマカン砂漠の風成堆積物は氷河堆積物の由来していること、風成堆積物と黄土の化学組成に違いが認められることを明らかにした。このデータをもとにして、中国大陸の平均化学組成を検討中である。 3.黒瀬川構造帯中にみられる三畳記チャートの希土類元素パターンはCeの正の大きな異常を示し、Ce異常の程度の小さな秩父帯南帯の三畳記チャートとは、堆積環境又は堆積後の続成過程が異なることが示された。
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