研究概要 |
本年度はタングステン及びモリブデンに注目し、新しいスルフィドおよびチオラート錯体の合成をめざし、以下の成果をあげた。 1.ペンタメチルシクロペンタジェニルを補助配位子にも半サンドイッチ型Cp^*WCI_4と種々のチオラートとの反応を行った。t-ブチルチオラート塩との反応では一部の炭素-硫黄結合切断がおこりスルフィド/チオラートCp^*W (S) _2 (S^tBu)が単離された。エタンジチオラート塩との反応においてはすべての炭素-硫黄結合が切断されたトリス(スルフィド)錯体[Cp^*W (S) _3]^-を与えるのに対し、類似プロパンジチオラート塩からは[Cp^*W (SCH_2CH_2CH_2S) ]^-が得られた。 2.上記トリスルフィド錯体[Cp^*W (S) _3]^-の反応性を検討した。この錯体は種々のアルキルハライドと容易に反応し、対応する中性チオラート錯体Cp^*W (S) _2 (SR)を与える。興味深いことに、トランやフェニルアセチレン等のアルキン類が容易にスルフィドに付加し、ジチオレン錯体Cp^*W (S) (SCPh=CRS)を高収率で与える反応を見い出した。 3.一方、モリブデンハライドCp^*MoCI_4とチオラート塩との反応では炭素-硫黄結合切断はおこらず、Cp^*Mo (S^tBu)_3,[Cp^*Mo (SCH_2CH_2S) _2]^-,[Cp^*Mo (SCH_2CH_2CH_2S) _2]^-を生成する。この場合、モリブデンは5価KARA4価に還元され、類似タングステン化合物の反応とは大きく異なる。Cp^*Mo (S^tBu) _3はヒドラジン類によって炭素-硫黄結合切断を伴う酸化反応がおこり、Cp^*Mo (S) _2 (S^tBu)が生成する。
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