研究概要 |
(A) バナジウムカルコゲナイドの研究 (1) 本科学研究費で購入した赤外線集中炉単結晶育成装置を利用して、化学輸送法により、バナジウムカルコゲナイドV_3X_4,V_5X_8 (X=S, Se) の大型良質単結晶の育成を試みた。化学輸送法による輸送剤としては、TeCl_4, I_2, HCl, Cl_2などを試みた。その結果、I_2が輸送剤として最も適当であり、例えばV_5S_8では5×5×1mm程度の単結晶を得ることができた。 (2) この結晶を用いて、高磁場化における磁化過程の研究を行い、50Tまでに磁場による2つの相転移を確認し、その解析を行い、現在論文投稿中である。 (3) また、これらの物質について核磁気共鳴の実験を行いつつある。 (B) ペロブスカイト型(Sr_<1-X>Ca_X) RuO_3の研究 CaRuO_3, SrRuO_3ともにペロブスカイト型構造をとり、両者とも金属的性質を示す。しかしながら、前者は低温まで常磁性であり、後者は約150Kで強磁性体となる。これらの固溶体を合成し物性の検討を行った。その中で最も特徴のある結果は、熱膨張の変化である。CaRuO_3においては、10Kより室温までデバイ関数で完全にフィッティングできた。ところが、強磁性体となるSrRuO_3では、強磁性転度温度T_C以下で“インバー"効果を示し、ほとんど一定値となる。酸化物でこのような“インバー"効果が示されたのは初めてであり、電子相関の観点からも重要な発見である。現在、論文を投稿中である。
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