今年度は、発生段階の異なる幼生の各組織においてI型コラーゲン遺伝子を発現している細胞の局在を明らかにした。その結果、初期の幼生の全身及び尾部を覆っている幼生型皮膚においては基底膜直上にある三角形をした表皮細胞における発現がみられるのに対し、発生が進んだ幼生の頭胴部を覆っている前成体型の皮膚では、表皮細胞におけるI型コラーゲンの発現は観察されなくなり、真皮層のみになることが明らかとなった。このことから、幼生の発生段階の早い時期に形成されるコラーゲン層の形成には、表皮細胞によるコラーゲン合成が関与している可能性が強く示唆される。また、これらの皮膚の表皮細胞を培養した場合には、本遺伝子を発現している細胞の割合が、生体内と比べて増加することが明らかとなった。 アカハライモリα1(I)およびα1(II)コラーゲンの全長のcDNAを単離した。これをプローブとして用いて行ったNorthern blotによる解析結果はアカハライモリの前肢の再生過程においては、α1(I)およびα1(II)コラーゲン遺伝子の発現量がともに亢進することを示した。さらにin situハイブリダイゼーション法によりα1(I)コラ下ゲン遺伝子を発現している細胞を調べたところ、筋肉から脱分化したと見られる再生芽細胞であることを見いだした。また、アカハライモリα1(I)コラーゲンのC-テロペプチド領域を抗原とするペプチド抗体を作製した。この抗体を用いた免疫組織染色は、再生中の筋繊維、再生芽細胞の周りにI型コラーゲンが局在することを示した。このI型コラーゲンは筋再生や再生芽細胞の接着や増殖に関係しているものと考えられる。
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