研究概要 |
MBE装置とArFエキシマレーザアブレーション装置を複合一体化した新しい超高真空多層薄膜形成装置を開発した。MBE装置の蒸発源には高温Kセル(加熱温度 1700℃)を採用し成膜の制御制を向上させた。この装置には金属酸化物セラミックス膜のO_2組成制御と基盤前処理のためのイオンガンとO-照射時の基板表面加熱用にCO_2レーザ光照射機能を付加してある。 Fe、Ni、Ti、TiNi(形状記憶合金;SMA)、Fe_<65>Ni_<35>(インバー合金;IVA)、バイメタル(BM)の金属および合金の超薄膜形成実験を行った。Kセルの採用で0.01nm/minの成膜速度制御と1%以下の組成制御が可能である。膜厚サブnmのTiとNi超薄膜を積層した構造の膜を形成し低温におけるマルテンサイト変態の可能性を検討している。SMA膜とBM膜を積層して最初の形状に戻すバイアス力をもつ新しい薄膜SMAアクチュエータを設計試作し,特性評価を進めている。 金属酸化物強誘電体薄膜としてArFエキシマレーザアブレーション法でAl_2O_3、PbO、TiO_2、BaTiO_3超薄膜のSi(100)基板上への形成実験を行った。膜厚4〜6nm、表面あらさ0.72nmR_yのAFM観察で緻密なAl_2O_3超薄膜を常温の基板温度で形成可能となった。基板温度750℃以上ではγ-Al_2O_3構造の多結晶薄膜となる。この膜はGMR薄膜やJ素子の層間絶縁膜として有望であり,素子を形成して膜特性の評価を次年度以降研究する。また、イオンガンを用いて基板の表面クリーニング処理を行い膜特性への効果を実験的に検討した。現状では金属酸化物超薄膜形成にはイオンビームによる前処理の効果は明らかでない。超高真空AFMによる詳細な検討が必要である。 膜厚4〜6nmのPbO、TiO_2、BaTiO_3膜が形成可能となった。最適成膜条件を探査し,表面あらさの現状1〜3mnからさらに改善をはかる。PbOやBaTiO_3薄膜の結晶構造と基板温度の関係が明らかとなった。Oイオン照射による酸素のストイキメトリイの精密制御やCO_2レーザ光による基板表面の加熱や励起による膜の結晶性の改善の検討を行う。BaTiO_3膜やPbO膜とTiO_2膜を積層したPbTiO_3膜やの強誘電体薄膜を形成し,誘電特性の評価を進める。
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