研究概要 |
前年度までに開発したレーザー誘起蛍光法による三次元流れ計測システムおよび非定常流れ計測システムを用いて,超音速キャビティ内の自由せん断流れ場における温度の時間平均三次元分布および時間変動を測定した.また,LES(Large Eddy Simulation)による非定常三次元数値計算を併せて行い,レーザによる計測結果と数値計算結果から,衝撃波を伴う遷音速自由せん断流れの三次元構造および非定常挙動を解析した.その結果,以下のことが明らかになった. 超音速キャビティ前縁から生じるはく離せん断層やキャビティ後縁から発生する離脱衝撃波,キャビティ内の渦など,流れ場の三次元構造を捕らえることができた.また,キャビティ内の流れ場には発生原因が異なる三種類の自励振動が存在することが明らかにされ,本実験の場合,これらの振動の周波数はそれぞれ7kHz,13kHzおよび20kHzであった.20kHzはせん断層内の渦がキャビティ後面に衝突する際に発生する圧力波によってキャビティ内に形成される定在波に起因している.7kHzの振動はキャビティ底面の前面コーナー側に形成される渦構造の発生から消滅までの周期と対応している.13kHzの振動はキャビティ内の後面側および前面側に形成される二つの渦構造の干渉に関連している.さらに,キャビティ前縁からの放出渦を伴うせん断層とキャビティ後面角部が干渉することにより,後面角部で発生する負および正の圧力波がキャビティ内の亜音速部を上流へと伝播し,キャビティ前面角部に到達してせん断層と干渉し,新たな放出渦の形成を促す過程がキャビティ内の20kHzの自励振動メカニズムであること,キャビティ底面の前面コーナー側に形成される渦構造に強い三次元性があり,これがキャビティ流れの渦構造および自励振動過程に大きな影響を及ぼしていることがわかった.
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