研究概要 |
本研究は、鋼構造物に使用される極厚鋼部材の材端溶接接合部に地震あるいは台風下でかなりの塑性ひずみを伴いながら入力させる繰り返し負荷によって発生する極低サイクル疲労現象を解明することを目的したものである。本年度は、前年度に導入した極低サイクル疲労試験機を用いて、次の3シリーズの実大破壊実験を行った。 1)兵庫県南部地震で大きな被害を受けた冷間成形角形鋼管の繰返し曲げ破壊実験を行った.幅厚比が20未満の厚肉になると,局部座屈ではなく脆性破壊によって終局状態が決まることが明らかとなった.このときの破壊は,大振幅の塑性ひずみ履歴によって溶接止端に発生・成長したき裂が脆性破壊を誘発するという現象であることがわかった.また,破壊までの塑性変形能力が角形鋼管の製造方法に大きく左右され,それが製品の降伏比とシャルピー値に依存していることがわかった. 2)最近の超高層建築の柱と梁の接合ディテ-ルの繰返し実験を行い,3種類の破壊モードの再現に成功した.それは,柱フランジの球根状剥離破壊,梁端ウェブフィレット破壊,梁端スカラップ底破壊である.梁端スカラップ底破壊は今まで何度も実験室で再現され,神戸の被害でも多く観察されたが,柱フランジの球根状剥離破壊と梁端ウェブフィレット破壊は実験室で初めて再現されたものであり,今後詳細な検討が必要であることが判明した. 3)地震エネルギーの吸収要素として考察されたスリット付鋼板の繰返し載荷による破壊実験を行い,破壊までのエネルギー吸収能力を調べた.建築構造物の受動的制振装置として適用できる見込みが得られた.
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