研究概要 |
1995年、単結晶を用いたMoSi_2の変形に関する実験によって、我々は1000℃以下の温度範囲で、MoSi_2単結晶がこれまでに全く知られていなかった異常な変形能を示すことを発見した。本研究の目的は、この変形能をもたらすメカニズムについて研究を進め、さらにこのような変形能がMoSi_2以外の遷移金属ダイシリサイドにも存在するか否かを明らかにすること、ならびにMoSi_2単結晶に見出された変形能を、MoSi_2を高温材料として用いるためにいかに応用すべきかを考えることである。MoSi_2以外の遷移金属ダイシリサイドとして、WSi_2、(Mo,W)Si_2、Mo(SiAl)_2、NbSi_2、CrSi_2、VSi_2、TaSi_2、TiSi_2を選択しその変形を研究した。 Mo(SiAl)_2、CrSi_2、NbSi_2、VSi_2、TaSi_2はC40型結晶構造を有するシリサイドであるが、その単結晶による塑性変形実感の結果以下のような興味ある結果が得られた。 (1)いずれのシリサイドも滑り変形は(0001)〈1210〉系の活動によって起こる。それ以外のすべり系は活動しない。 (2)NbSi_2、VSi_2、TaSi_2中の(0001)〈1210〉すべりの起こりかたは、HCP金属・合金のそれと基本的な相違はないが、Mo(SiAl)_2、CrSi_2におけるそれは、全く異なったメカニズムすなわち、シンクロシア-メカニズムによって起こる。 (3)NbSi_2の場合、as-grown状態の結晶は500℃であるが、1400℃で予変形することによって、300℃から塑性変形可能となる。 (4)MoSi_2のへき開面と垂直な界面を形成するNbSi_2、あるいはTaSi_2とMoSi_2を複合することによって、MoSi_2単結晶に見られた特異な変形能を生かし得る可能性がある。
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