研究概要 |
平成7年度に,超高真空対応のマニュピレーションシステムを納入した.このシステムは既製品でもまた既製品の組み合わせでも無く,従来不可能であった計測を可能にした.しかし,さらに1軸の自由度と,正確な温度制御システムがあれば,より明確な観察と電子の浸み出し効果に関する実験的検討を行うことができることが判明した. そこで,表面分析装置の超高真空とイオンスパッターシステムに,マイクロマニピュレーターを組み合わせる事により,(1)表面吸着(汚染)物質の無い状態で,(2)様々な材料の組み合わせに対し,(3)表面の価電子状態(化学結合状態)を知った上で,(4)接触部をその場観察しながら,固体間凝着力を計測するシステムを作成することができた.表面拡散効果を明らかにするため,さらに加熱ステージの装着にも成功した. 今までの実績のある系として,金とシリコンウエハを中心に固体間凝着力の計測を行った.結果は,弾性連続体近似の接触理論および分子動力学的手法による予測と比較検討された.現象は,これらの理論的取り扱いでおおむね問題ないが,イオンスパッターによる表面のダメ-ジによる凝着力の変化は,表面エネルギーよりもむしろ表面の変形能に依存する可能性が示唆された.その場観察しながら凝着力を計るには試料形状に工夫が必要であることなど今後の課題も明らかになった.
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