研究概要 |
我々はヘテロ原子、とくに硫黄原子と窒素原子の特性に注目し、これらの特性を活用した有機合成、とくに新規合成反応の確立と新規機能性化合物の開発について、平成7年度に得た基礎的知見をさらに発展させるべく研究した結果、次のような成果を挙げることができた。 1.1,2-不斉誘起ラジカル反応と光学活性化合物の合成:1-チオ-1-スルホニル(またはアルコキシカルボニル)-3-ヒドロキシ-1-アルケンへのラジカル付加において、極めて高い高率で1,2-不斉誘起が生起することを見いだした。 2.新規ベンゼン環形成反応:4-アセトキシ-1-クロロ-3-スルホニル-1,5-ヘキサジエン類を塩基で処理すると、1E体から素早くベンゼン環形成反応が起こり、1Z体では1,3,5-トリエン体が一旦生成する。このトリエン体に光照射すると、環化反応とそれに続く脱HCl反応が連続して起こり、ベンゼン誘導体が得られることを明らかにした。 3.光学活性α-アミノ酸の不斉合成:α-(2-ナフチル)および(ビニル)グリシンの光学活性体の合成法を確立した。 4.硫黄と窒素を有する機能材料の開発:チオフェン環とピロール環を組み込んだπ電子共役系の構築法を確立した。さらに、その両端に1-(メチルチオ)-1-(p-トリルスルホニル)エテニル基を導入すると、容易にカチオンラジカルを発生出来、高い三次非線形性を示すことを明らかにした。 5.ピリジン-金属配位を利用した大環状化合物の合成:ビリジン環を含む三座配位子と二価パラジウム金属との反応により、各種三次元大環状金属錯体が自己集合することを明らかにした。
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