研究概要 |
第三周期元素の活性化に基づく新しい合成反応の開発の一環として,環状ジエンの不斉ヒドロシリル化により合成した光学活性環状アリルシランとハロゲン化アリールとのクロスカップリング反応を検討した。その結果,ヨウ化物をフッ化テトラブチルアンモニウムとともに用いると,不斉転写率約80%でクロスカップリング反応が進行することを見つけた。フッ素源をフッ化セシウムに代えると生成物の絶対配置が逆転する。これらの知見は,有機ケイ素化合物の立体配置が安定であるので新しい不斉クロスカップリング反応の開発につながると期待できる。 有機ケイ素化合物をクロスカップリング反応に用いるにはフッ化物イオンが化学量論量必要であるが,系内で求核性賦活剤を発生しうる炭酸アリルをカップリング相手に用いると,フッ化物イオンを用いなくてもクロスカップリング反応が円滑に進行することを見つけた。この結果は,厳密な中性条件下で反応できることを示していて,フッ化物イオンに弱い官能基を有する化合物もクロスカップリング反応に使えることを示し,上記クロスカップリング反応が多官能性の有用化合物の合成に広く適用できる可能性を示している。 一方,酸化的脱硫フッ素化反応により,トリフルオロメチルアミン型新規液晶化合物をいくつか合成した。これらは,ネマチック型液晶の添加剤として有用であることを見つけた。酸化的脱硫フッ素化反応を広く展開して,トリフルオロメチルエーテル型液晶の合成と利用など,含フッ素芳香族化合物の有用化合物への展開を継続して検討する。
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