研究概要 |
パラジウム触媒を用いる有機ケイ素化合物のクロスカップリング反応にシラノールを用いることの可否を検討した。その結果,酢酸パラジウム当量共存下ジメチルフェニルシラノールが電子不足型オレフィンと溝呂木-Heck型反応し,シラノール上のフェニル基がオレフィンのビニル水素と置換することを見つけた。この反応は,アルケニルシラノールにも適用できる。酸化剤を共存させることにより,酢酸パラジウムを触媒量に減らすことも可能である。 パラジウム以外の遷移金属触媒によるケイ素化合物の新規カップリング反応として,銅(I)塩を用いるアルキニルシランと1-クロロアルキンの交差カップリング反応をおこなった。塩化銅触媒量存在下,溶媒ジメチルホルムアミド中80℃で反応は円滑に進行し,対応する1,4-ビアリール-1,3-ブタジインを良好な収率で得た。この反応は,ケイ素化合物の活性化にフッ化物イオンを必要とせず,カップリング反応を中性条件でおこなえる特徴がある。 酸化的脱硫フッ素化反応条件によるfluoro-Pummerer転位を鍵反応として,末端オレフィンを短工程でνic-ジフルオロオレフィンに変換する方法をみつけた。末端オレフィンのチオフルオ口化,fluoro-Pummerer転位,スルフィドの酸化,加熱による脱離反応の4工程を経てνic-ジフルオロオレフィンを簡便に合成できる。生成したジフルオロオレフィンはトランスおよびシス体の混合物であるが,これらは容易に分離できる。 また,有機スズ化合物の炭素-スズ結合にパラジウム-イミノホスフイン錯体が酸化的付加することを見つけ,これがカップリング反応の良好な中間体であること,また,特にアルキニルスズはアルキンヘカルボスタニル化反応して,対応するエンイン化合物を収率良く生成することもみつけた。
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