研究概要 |
7年度は主に、以下の3点についての知見を得た。 (1)シリレノイド化学 シリレノイド化学についての初めての知見を得た。まず、ヘテロ原子置換基としてアルコキシ基を有する、(アルコキシシリル)リチウムの生成に初めて生成した。(アルコキシシリル)リチウムは、-78°Cでは求核性のみを示した。これに対して、0°Cでは速やかに自己縮合を起こした。また、外部求核剤であるブチルリチウムとも反応した。このように(アルコキシシリル)リチウムが、求核性と同時に求電子性を有すること、すなわちシリレノイドとしての性質を有することを明らかにした。 (2)パラジウム触媒を用いた(アルコキシ)オリゴシランの骨格転位 従来法では合成が困難であった、ポリ(アミノ)オリゴシランおよびポリ(アルコキシ)オリゴシランの効率的な合成法を開発した。さらにポリ(アルコキシ)トリシランおよびテトラシランが、パラジウム触媒存在下で骨格転位を起こすことを見いだした。この反応では内部のシリレン部位が末端へ転位する。例えば1,2,2,3-テトラ(メトキシ)トリシランは定量的に1,1,1,3-異性体に変化した。重水素ラベル実験により、反応機構についての考察をおこなった。 (3)5配位(アルコキシ)ジシランの合成、構造および反応性 5配位(アルコキシ)ジシランの合成に成功するとともに、このX線結晶構造解析をおこない、構造上の特徴を明らかにした。この(アルコキシ)ジシランは温和な条件下で熱分解を起こし、シリレンを生成した。このシリレンをアセチレンで捕捉することにより、5配位ジシラシクロブテンを得ることに成功した。さらにこのX線結晶構造解析をおこなった。対応する4配位(アルコキシ)ジシランは同条件下では安定であり、シリレンを与えなかったことから、官能性5配位ジシランの特異な反応性が明らかとなった。
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