研究概要 |
1. 脂質膜間膜タンパク質移行現象を利用した他細胞膜への膜タンパク質組み込み トリチウム標識した脂質を用いてリポソーム-赤血球細胞間における脂質移行に関して研究をおこなった.その結果,通常のホスファチジルコリン中のエステル結合をアミド結合に置き換えた構造を持つ人工脂質は通常の脂質よりも10倍以上大きい移行初速度を持つことが明らかとなった.また,さらにこの脂質移行が細胞膜からの膜タンパク質移行を誘起すると考えられることを示した. 2. 糖鎖の関与する情報伝達機構をとおしての細胞機能制御 シアル酸数の異なるガングリオシド脂質(GM3,GD3,GT1b,GQ1b)をリポソームに組み込み,免疫細胞,特にT細胞の活性化を共焦点レーザー蛍光顕微鏡による細胞内カルシウム濃度の増加の追跡により評価した.その結果,ポリシアロガングリオシド(PG)含有リポソームがin vitroでT細胞を活性化することを見いだした.さらに,この活性化の程度はガングリオシド脂質の構造に強く依存すること,また活性化にはリポソーム表面での糖鎖の集積効果が重要であること,さらに活性化にあたりリポソーム表面糖鎖のクラスター効果が重要であると考えられることが解った.以前に報告されたin vivoでの免疫誘導活性における糖鎖構造依存性と今回明らかとなったin vitroでのT細胞活性化における糖鎖構造依存性とは非常に良い相関を示した. 以上のとおり,平成7年度において,脂質膜間膜タンパク質移行現象を利用した他細胞膜への膜タンパク質組み込み,および糖鎖の関与する情報伝達機構をとおしての細胞機能制御の両研究とも特に問題なく当初の計画通り遂行された.なお当該年度に本研究に関連して16件の国内外学会発表および7件の学術論文・解説の発表を行った.
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