研究概要 |
一般に石油坑井の掘削により石油鉱床から回収される原油は,原始埋蔵量の20%程度であると考えられている。このため,炭酸ガスや水蒸気の圧入による石油強制回収法(EOR; Enhanced Oil Recovery)が世界中の油田で実施されている。しかしEOR攻法を効率的に実施するためには,地下の浸透率の情報を的確に把握することが重要である。すなわち,石油鉱床内の原油および地層水の分布,そして注入流体の侵入状態,油層内の流体の経時変化を3次元的に把握するためのモニタリング調査は不可欠である。 本研究ではEOR攻法時に発生する電磁波動現象に着目して,地表物理探査により浸透流の動的な挙動をリアルタイムに可視化するためのシステムを開発し,実際にEOR攻法が実施されている国内外の油田へ応用して石油貯留層の分布および注入流体の経時変化をリアルタイムにモニターすることを目的としている。平成7年度は,まず地地下深部の浸透流体の移動に伴って発生する電磁波を高精度に観測する電磁法のシステム(V-5)を購入して,室内のキャリブレーション実験およびフィールドにおける電場および磁場の多成分測定により,地下深部の電磁波動現象を高精度に連続観測するシステムを構築した。次いで,カナダ国アルバ-タ州のオイルサンド鉱床において,水蒸気攻法時に長時間(4ヶ月)にわたり連続観測した比抵抗分布および自然電位分布のデータ解析を行った結果,電気比抵抗分布から油層流体の3次元分布を把握し,自然電位分布から注入流体の経時変化をモニターできることを明らかにした。さらに,EOR攻法時に発生する流動電位の発生メカニズムに着目し,3次元モデルによるコンピュータシミュレーションおよび室内実験による結果から,流動電位の経時変化をモニターすることにより,地層流体の圧力分布の経時変化を直接イメージできるとの結論を得た。
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