研究概要 |
一般に石油坑井の掘削により石油鉱床から回収できる原油は,原始埋蔵量の20%程度であると考えられている。このため,炭酸ガス攻法,水蒸気圧入による石油強制回収法が世界中の油田で実用化に向けて研究されている。しかし,このような石油増進回収法を効率的に実施するためには,地下の浸透率の情報を的確に把握することが不可欠である。しかし,従来の物理探査法は静的な物理現象の計測を目的としており,EOR攻法のように時空変化する動的な対象に対しては適用できなかった。したがって,本研究では,まずEOR攻法時に地下深部で発生する電磁波の擾乱現象に着目して,浸透流の動的な挙動をパソコンを利用して自動的に計測して可視化するシステムを世界で初めて開発した。次いで,この時得られる流動電位の分布を任意の3次元モデルを仮定してインバージョン解析するプログラムを研究開発した。さらに,この新しい概念の4次元(空間,時間)探査法を,実際に流体注入や水圧破砕実験と同期して実施することにより,地下深部の流体挙動をリアルタイムに可視化することに成功した。なお,これらのデータ解析結果を,微小地震観測による探査結果と比較検討したところ,両者のデータ解析によって決定されるソースの位置(x,y,z)およびフラクチャーの分布は,走向および傾斜共にほとんど一致することが検証された。 平成9年度は,本研究で購入した電磁波動の観測システムおよび地震波動の観測システムを併用して,坑井から地下深部へ流体を注入する場合に発生する微小地震を的確に捉え,フラクチャーの分布および進展状況(経時変化)を地表からの物理計測によってモニターし,地下浸透流をリアルタイムに画像化する4次元探査法を確立する。
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