研究概要 |
本研究は,設計と施工の同時進行型プロジェクトの整合的な実施方式の開発を目的とした。建築生産組織の統合と情報システムの援用を前提として,本年度は実施の方法論について検討した。主な研究成果を以下に示す。 1. 設計者は生産情報を必要としており,特に工事費,工期など施工者側からの最新情報を提供する公的なしくみの構築が求められていることを明らかにした。 2. 施工者は生産情報を設計者に流す意思はあるものの,制度・組織上の制約や実施プロジェクトの情報が系統的に管理されず再利用可能な状態にない,等の理由から実際には情報が流れていないことを明らかにした。 3. 建築生産プロセスの現状は,最小単位の業務の数理的解析を行った結果として,関連の強い業務群の集団をいくつか含んだ形でネットワーク図に描かれること。つまり,従来考えられていた直列型のモデルでは,現実の情報の流れや業務の進行を表現できていないことを明らかにした。 4. 設計と施工の同時進行型プロジェクトにおいては,従来の基準,制度,慣例にはない新しい業務内容,組織形態が必要となっていること。また,それを支援するためには,知的な情報システムの構築はもとよりシステムの使われ方,協調関係,プロジェクトの目的の明確化まで含めた検討が求められていることを明らかにした。 5. 同時進行型プロジェクトの業務を整合的に実施するためには,前述のプロセスのモデル化に加えて,設計結果情報の構造的なモデル化が必要であること。そして,両者の統合化がプロジェクトの整合的,かつ柔軟なマネジメントに不可欠であることを明らかにした。 本研究は平成7年度に開始されたところであって,評価を確定できる状況にはないが,次年度以降も引き続き具体的モデルの開発を中心に,研究計画を継続したい。
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