研究概要 |
原料の一つであるS(硫黄)の精製を行い,レーザーホストとしての高純度Ge-Ga-Sガラスの調製法を確立した。Ge-Ga-Sガラスの屈折率,Judd-Ofelt解析によるNd^<3+>,Pr^<3+>の輻斜遷移確率と1.3μm帯光通信ファイバー増幅器のためのPr^<3+>:^1G_4→^3H_5の量子効率を評価した。高純度Ge-Ga-Sガラスが約2.2の高い屈折率と350cm^<-1>の低い最大フォノンエネルギーに起因して,Pr^<3+>:^1G_4→^3H_5において50%の高い量子効率を持つことが明らかになった。PbF_2添加と乾燥O_2雰囲気での溶解により調製した脱水PbO-Bi_2O_3-Ga_2O_3(PBG)ガラスのついてYb^<3+>→Pr^<3+>のエネルギー遷移過程を検討し,Yb^<3+>→Pr^<3+>のエネルギー遷移が速やかに起こるため,Yb^<3+>濃度が高いほどPr^<3+>:^1G_4→^3H_5の発光強度が高いこと,Pr^<3+>の同遷移の発光寿命がPr^<3+>-Pr^<3+>間エネルギー遷移の影響を強く受け,Pr^<3+>濃度の増大とともに著しく短くなることがわかった。さらにYb^<3+>/Pr^<3+>共含有PBGガラスが,約2.5の高い屈折率と550〜650cm^<-1>の比較的低いフォノンエネルギーに起因して,酸化物ガラスにもかかわらず,^1G_4→^3H_5遷移においてはYb^<3+>/Pr^<3+>共含有ZrF_4系フッ化物ガラス(ZBLAN)と同等の発光強度を持つことを明らかにした。高エネルギー物理学研究所においてアルカリケイ酸塩ガラスにおける微量Nd^<3+>イオンの局所構造解析をX線吸収微細構造解析法(XAFS)を用いて行い,Nd^<3+>の吸光特性に対応しNd^<3+>周囲の局所構造を反映すると漠然と言われていたJudd-OfeltパラメータがNd-D間平均距離と相関があることが判明した。さらに分子動力学シミュレーション法によりNd^<3+>の局所構造を評価し,修飾酸化物のLi_2O,Na_2,K_2Oの違いに対応してNd^<3+>の局所構造(酸素配位数,Nd-D間距離)が変化することがわかった。またNd^<3+>の局所構造が網目修飾イオンのLi^+,Na^+,K^+のそれとは大きく異なり,ガラス構造におけるNd^<3+>の役割が修飾陽イオンと異なることが示唆された。Nd^<3+>をドープしたSiO_2ガラスと少量(<5mol%)のAl_2O_3を含むSiO_2ガラスではNd^<3+>局所構造が大きく異なり,Al^3イオンがO^2イオンを介してNd^<3+>に配位していることやこの違いがJudd-OfeltパラメータのΩ_2に強く反映されることが明らかとなった。
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