研究概要 |
モデルオキシゲナーゼ錯体の触媒機能の反応場制御 非配位性溶媒中モデルオキシゲナーゼ錯体を用いてフェノール誘導体を酸素酸化すると,基質ラジカルを含まない反応経路で酸素がオルト位に特異的に導入されるが,この系にピリジン等の配位性分子を添加すると,酸素の導入位置がパラ位に特異的に変わり,p-キノール誘導体が定量的に得られた。この結果は,モデルオキシゲナーゼ錯体の触媒機能が反応場制御により転換(酸塩基型から電子移動型)されることを示している。この非興味深い選択性の制御は,配位飽和コバルトヒドロキソ錯体とE^Oが-600mV〜-300mVの範囲にあるフェノール基質の組み合わせの場合に成立することを明かにした。配位不飽和コバルトヒドロキソ錯体,E^O<-600mVをもつ基質の反応は複雑となり,E^0>-300mVの基質はアミノ存在下では全く反応しなかった。五配位形ス-ペルオキソ錯体の可逆的生成反応の一般性 低スピン平面形四配位コバルト(II)シッフ塩基錯体が非配位性溶媒中低温(-80℃付近)で可逆的に五配位形スペ-ルオキソコバルト(III)錯体を生成する反応を系統的に研究し,酸素錯体の生成する温度は錯体のE^oが正側にあるものほど低温を要するが,生成した酸素錯体の電子状態は錯体の^oに無関係でほぼ一定になることを明かにした。配位不飽和ス-ペルオキソ遷移金属錯体の化学的挙動 下述のような成果を得た。(1)配位不飽和ス-ペルオキソコバルト(III)錯体はPy, PPh_3, MeO^-等を配位した配位飽和ス-ペルオキソ錯体を定量的に生成し,純粋な形で単離できる。その電子状態は配位子の種類に依存する。(2)酸化反応性は予想に反して極めて低いが,プロトンや酸クロリドに対しては求核的に反応する。(3キノン類に対しては一電子還元剤として機能する。(4)NaBH4の存在下オレフィンの酸素酸化を触媒して対応するアルコールを生成する。(5)ニトロソ化合物にジカル付加をし,ニトロ化合物に変換する。
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