研究分担者 |
安永 智佐 九州大学, 農学部, 助手 (20264103)
伴野 豊 九州大学, 農学部, 助手 (50192711)
河口 豊 九州大学, 農学部, 助教授 (80038306)
大庭 道夫 九州大学, 農学部, 助教授 (80038281)
古賀 克己 九州大学, 農学部, 教授 (40038261)
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研究概要 |
これまで日本の研究者には未確認であった,クワコBombyx mandarina Moore 1882の模式標本の所在について調査した結果,本種の模式標本は大英博物館に所蔵されていることが確認された。また,クワコ模式標本の模式産地が中国上海であることがはじめて明らかになった。模式標本となったクワコの染色体数は,模式産地に近い江南地方クワコの染色体数がカイコBombyx moriと同数のn=28型であることを再確認した。これに対し,日本(北海道,本州,九州)産のクワコの染色体数はいずれもn=27型で明瞭な差異が認められた。従って,中国江南地方に分布するクワコは日本産クワコに比較して,カイコにより近縁な野性型昆虫であると判断されるに至った。 一方,わが国におけるクワコの分布についても養蚕地帯以外では調査不十分な地域が多く,生物相に大陸系要素の多く見られる長崎県対馬のクワコが大陸系である可能性があるため,その染色体数調査が緊急に必要となったので,現在まで採集記録はあるが標本の存在しない対馬と採集記録のない沖縄本島および八重山諸島におけるクワコの分布調査を行った。対馬における分布調査では,島内数カ所のヤマグワから繭および幼虫が採集されたが,発生経過は北九州とほぼ同様であった。また,対馬産クワコの染色体数がn=27型であることが初めて確認されたことから,朝鮮半島および中国北東部,沖海州に分布しているクワコもn=27型である可能性が高い。いたがって中国には染色体数がn=28型およびn=27型のクワコが分布していると判断される。一方,沖縄本島,石垣島,西表島のシマグワからクワコを採集する試みは成功しなかった。 かた,日本産クワコ,中国産クワコ,カイコ間における交雑試験の結果F1,F2ともに稔性は低下しなかった。またF1,F2の飛翔能力はクワコ間の交雑では低下しなかった。一方,カイコとの交雑では産卵前の♀の飛翔能力の低下が観測されたが,産卵後には♀の飛翔能力の回復現象が認められた。 九州産クワコの年間発生回数は3〜4化で越冬形能は卵である。2化期以降はクワコヤドリバエの奇生率が高い。また,九州産クワコに微胞子虫に感染個体が検出されたが,Nosema bombycisの感染によるものではなかった。
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