研究概要 |
(1)抗原分子のアミノ酸置換アナログの利用 ウシβーラクトグロブリンの119-133残基ペプチド(p119-133)の1残基置換アナログであるD129S(^<129>Asp→Ser)を一次免疫時にp119-133と同時にマウスに投与した場合にはp119-133だけを一次免疫時に投与した場合と比べ,p119-133だけを投与した二次免疫後のp119-133特異的IgE産生が,大きく低下した.これより,抗原ペプチドのアナログを用いて抗原特異的にIgE産生を抑制することが可能であることが明らかとなった.また,α_<S1>-カゼインの142-149残基ペプチド(p142-149)の1残基置換アナログ90種についてCD8^+T細胞のサイトカイン産生誘導能を能を調べたところ,IgE産生抑制作用をもつIFN-γの産生を顕著に増大させるもの,IL-10産生のみを誘導するものの存在が明らかとなった. (2)経口免疫寛容の利用 蛍光標識卵白アルブミンを用いて経口抗原を取り込む細胞の同定を試みた.その結果,パイエル板,肝臓細胞において取り込みが認められた.次にパイエル板細胞の抗原提示能を解析した.パイエル板細胞によって抗原提示を受けたT細胞は,脾臓細胞による抗原提示の場合と異なり,IFN-γを強く産生しIL-10はほとんど産生しない細胞に分化した.この結果,パイエル板細胞は特有の抗原提示能を有することが示唆された.次に,T細胞抗原レセプタートランスジェニックマウスにおいて,抗原の経口摂取により脾臓においてIL-4産生能を有しながら,B細胞の分化誘導に必要なCD40L分子の発現能の弱いT細胞が誘導された.この細胞は,抗体産生誘導能の強いとされる「Th2型」サイトカイン産生パターンを示しながら,抗体産生誘導能を十分有しない独特の細胞と考えられた.このような細胞が経口免疫寛容の誘導に関与する可能性が考えられた.
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