研究分担者 |
本城 凡夫 水産庁南西海区水産研究所, 部長
古澤 巌 京都大学, 農学部, 教授 (10026594)
吉永 郁生 京都大学, 農学部, 助手 (40230776)
左子 芳彦 京都大学, 農学部, 講師 (60153970)
内田 有恆 京都大学, 農学部, 助教授 (50027190)
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研究概要 |
平成7年度は日本近海でしばしば赤潮を発生するラフィド藻Heterosigma akashiwoと渦鞭毛藻Gymnodinium mikimotoiに対して殺藻作用を示す海洋細菌のおよびウィルスの検索を重点的に行った.まず6月下旬から7月初旬にかけて広島湾で発生したH. akashiwo赤潮に際して,本藻を殺滅する細菌が海水中で劇的に増加し,それに伴って赤潮が消滅する現象が観察された.これは過去二年間観察されており,この海域の赤潮消滅に殺藻細菌が関与している事が強く示唆された.この時分離した約百株の殺藻細菌について,16SリボゾームRNA遺伝子をPCR増幅し,いくつかの制限酵素によるRFLP(制限酵素断片長多型)を解析したところ,赤潮殺藻細菌には複数種存在するものの,実際に赤潮の消滅に深く関与しているのは平成6年度の赤潮に際しても優勢であった二群の細菌である事が明らかになった.現在この二群の殺藻殺菌のリボゾームRNAをそれぞれ認識するDNAプローブを開発中である.さらに田辺湾海水中からG. mikimotoi殺藻細菌も得られたが,これらの細菌はいずれも殺藻物質を菌体外に分泌して赤潮藻を殺滅する細菌であった.しかし,その殺滅物質は互いに異なるものであろうと思われた.今回得られた殺藻細菌はいずれも宿主特異性が低く,ラフィド藻,渦鞭毛藻そして珪藻を殺滅することができたが,その殺滅作用の発現には宿主となる赤潮藻が分泌する物質がスイッチとなっている事を示唆する予備的な知見を得られた.一方,上記のH. akashiwo赤潮の消滅期に,H. akashiwo細胞内にウィルス状の粒子を観察できたが,分離することはできなかった.さらに,渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseやG. catenatumによって産生され,人間の中毒を引き起こす麻痺性貝毒(サキシトキシンなど)を分解する海洋細菌をあらたに分離することができた.
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