研究概要 |
単細胞緑藻(Scenedesmus acutus)を用いた実験で確認されている,プロトポルフィリノーゲン酸化酵素の阻害,プロトポルフィリン-IXの蓄積,エタン発生を伴うチラコイド膜の破壊,光合成色素の減少という所謂Peroxidizing作用機構が数多くの化合物について知られている.当該研究グループはこのPeroxidizing機構を説明するために,活性酵素が関与するラジカル反応によりチラコイド膜が破壊するという機構を提出している.当該年度においては,平成7年度研究計画に従って下記(1)〜(3)の検討を行った. (1)既存プロトポルフィリノーゲン酸化酵素阻害剤を処理後に生じる過酸化脂質を定性的・定量的に検出するために,HPLC-イソルミノール化学発光法を用いることとし,そのための分析機器として全自動脂質分析システムを購入した.平成8年度の本格定量分析に備えて,システム系の調整を完了した. (2)平成8年度の膜破壊定量分析に必要となる,活性酸素発生を強力に誘導するプロトポルフィリノーゲン酸化酵素阻害剤の分子設計と合成を行った結果,Diphenyl ether系化合物と環状イミド系化合物に数多くの阻害剤を見い出した.分子設計の成果については研究発表(11)項に記載の雑読に発表した. (3)単細胞緑藻以外の植物細胞系へのPeroxidizing化合物の影響について検討を開始した.平成7年度においては,主にタバコ馴化培養細胞とゼニゴケ培養細胞を用いて検討を行ったが,単細胞緑藻,タバコ細胞,ゼニゴケ細胞でPeroxidizing化合物に対する感受性が異なることが明らかにされた.この結果についても,雑誌に発表された. 以上の平成7年度の成果を考察し,平成8年度の本格検討に入る予定である.
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