研究概要 |
本年度に本研究で得られた実績は以下のとおりである。 (1) ATP感受性カリウムチャネル A)ATP感受性カリウムチャネルのチャネル開口薬(ピナシジル,ニコランジル)による活性化がスルホニルウレア受容体のサブタイプであるSUR2aとSUR2bにより異なり,心臓型であるSUR2a/Kir6.0が活性化する濃度のニコランジルでは平滑筋型であるSUR2b/Kir6.0では活性化しないことを見い出した.B)ATP感受性カリウムチャネルのイオン透過孔周辺の3次元モデルを作成し,このモデルに基づき、ポア領域のアミノ末端側の3つのアミノ酸(Kir6.2におけるSer(113)-Ile(114)-His(115))とカルボキシル末端側の1つのアミノ酸(Kir6.2におけるVal(138))がチャネルコンダクタンス決定に重要であることを推定し,この部分のアミノ酸を他のアミノ酸に換えて,アミノ酸のチャージを換える事により確かにコンダクタンスが変化する事を明らかにした。 (2) G蛋白調節性カリウムチャネル A)マウス膵臓ランゲルハンス島α細胞にG蛋白調節性カリウムチャネルが発現しており,これがKir3.2a/Kir3.4の組み合わせであることを見い出した。更に、このチャネルが細胞外からのソマトスタチン刺激により活性化することを明らかにし、膵臓ランゲルハンス島α細胞の細胞外からの刺激調節にG蛋白調節性カリウムチャネルが関与し、α細胞からのグルカゴン分泌を調節している可能性を初めて示した。B)心臓からKir3.0の新たなサブユニットKir3.1bを単離し、その活性を調べることによりG蛋白質によるチャネル活性化にチャネルのカルボキシル末端が重要であることを示唆した。 (3) その他の膜2回貫通型カリウムチャネル A)Kir2.0サブファミリーが中枢神経系において嗅球に階層状に発現していることを見い出した。B)網膜ミュラー細胞にてKir4.lがアクアリン4と共発現している事,これにアンカリング蛋白が関与していることを見い出し,Kir4.1が網膜にてカリウムイオンのくみ出しに関与している事を示した.
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