研究課題
一般研究(A)
(1)培養条件下で細胞間接着能異常を呈するヒトがん由来細胞株において、E-カドヘリン分子プロモーター領域のCpGメチル化がE-カドヘリン発現低下を惹起することを証明した。(2)カドヘリンの細胞質内裏打ち蛋白の一つであるβ-カテニンとc-erbB-2がん遺伝子産物の直接結合を証明し、そのβ-カテニン側の結合ドメインを決定した。c-erbB-2結合ドメインを含みカドヘリン結合ドメインを欠く変異β-カテニン分子をヒト胃がん由来細胞株にtransfectionし、β-カテニンとc-erbB-2間のシグナル伝達を競合的に阻害して、in vitroにおける浸潤能とヌードマウス同所性移植時の浸潤性・播種性増殖の抑制を達成した。(3)β-カテニン結合蛋白としてWest-western法によってカドヘリン-11分子を単離し、浸潤性の著明な胃硬性がん細胞ならびにその腫瘍間質細胞におけるカドヘリン-11分子の高発現を証明して、カドヘリン-11分子が腫瘍細胞-間質細胞間相互作用を担い腫瘍の浸潤性に寄与する可能性を提唱した。(4)ヒト大腸高分化腺がん由来培養細胞がホルボールエステル処理により管状構造を失い迅速にspreadingするin vitroモデルを解析し、インテグリン裏打ち蛋白パキシリンのリン酸化により、カドヘリン機能が失われてβカテニンが細胞質から核に移行しadherens junctionが消失するとともに、focal adhesionを形成する経過を明らかにした。(5)大腸がん臨床症例の肝転移率ならびに予後と高い相関を示す新たな浸潤形式の形態学的分類(streak type・non-streak type)を提唱し、streakの成立に寄与する腫瘍細胞-間質間相互作用とそれに関わるシグナル伝達機構を明らかにするために、チロシンリン酸化蛋白を組織切片上in situで評価しうる脱リン酸化阻害剤を用いた手術材料の固定法を開発した。
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