研究概要 |
ヒト皮膚に対して直接日焼けを惹起させる中波長紫外線(以下UVB,B域UV,290〜320nm)は紅斑反応,DNA障害,発癌の元凶とみなされており極めて有害な作用を有している。一方,主に色素沈着を惹起させるUVA(A域UV,320〜400nm)は組織に与える障害こそ少ないが,地表に到達する量はUVBの10培以上である。また,UVBが真皮浅層までしか到達しないのに比べ,UVAは真皮深層まで至る点で,皮膚末梢血管を循環する血球を介してUVAが与える一時的な全身的作用も無視できない。 本研究では,UVA照射がヒト好中球の活性酸素種産生に対して与える影響について化学発光法(増感剤としてルミノールとルシゲニンを使用)を用いて多角的に検討を行った。さらに好中球の遊走能(トリパンブルー色素排除法)および血清オプソニン活性に与える影響についても検討を加えた。結果は以下のようであった。 1.好中球活性酸素種産生能に関しては,UVA照射により好中球細胞膜のreceptor levelあるいはそれ以降のprotein kinase C(PKC)活性化までのpostreceptor levelでの刺激伝達系が阻害される可能性が示唆された。またreceptor活性化に引き続く活性酸素種産生系をプロモートしているPKC以下の情報伝達系においては,少量のUVA照射ではPKC,superoxidedismutaseおよびmyelop eroxidaseの活性は保たれているが,大量のUVA照射ではPKC活性が低下しているものと考えられた。 2.好中球遊走能は,UVA照射により有意な変化は認められず,受ける影響に対し一定の見解は得られなかった。 3.UVA照射により,免疫グロブリンおよび補体が関与する血清オプソニン活性の亢進が認められ,この活性亢進はC3の活性化に伴うものと考えられた。
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