研究概要 |
私達はHLA B44拘束性C型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞がHLA-B44を有する慣性C型肝炎患者末梢血中に存在し,そのような細胞障害性T細胞はC型肝炎ウイルスコア蛋白アミノ酸残基88-96を最小エピトープとして認識することを先に明らかにした.昨年度はどのような分子機構によりC型肝炎ウイルス特異的細胞障害性T細胞がウイルス感染細胞を障害するか検討を行い,通常の肝炎で見られる細胞障害性T細胞の数では,パ-フォリンの系がウイルス感染細胞の障害に最も重要な役割を果たしており、Fas/Fasリガンドを介する系とTNFはウイルス非感染ではあるが肝炎そのものの影響でFasの発現が増加した肝細胞の障害に関与していることを明らかにした.今年度は,HLA B44拘束性HCV特異的CTLの抗原エポトープの変異がCTLの認識,増殖にどのような影響を与えるかを検討した.HLA B44を有する慢性C型肝炎患者の血清中のHCVのHCVコア抗原88-96のアミノ酸配列を検討すると約10%の症例で野生型とは異なった配列を認めた.認められた変異を有するペプチドを3種類合成し,HCV特異的CTLによる認識,増殖刺激を検討したところ,1つのペプチドは認識,増殖刺激ともに野生型ペプチドと同様であったが,他の2つのペプチドはCTLによる認識は野生型と同様であるにもかかわらず,蔵相刺激能は低いことが判明した.また,このような変異ペプチドと野生型ペプチドが共存すると,CTL活性を部分的に抑制するだけでなく,変異ペプチドを認識するCTLの増殖を抑制することも判明した.
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