研究課題
一般研究(A)
平成7年度の研究において、我々は、エンドセリン-1(ET-1)遺伝子プロモーター領域を用いた血管壁選択的遺伝子発現系を確立し、これを用いたトランスジェニックマウスをいくつか作成した。このなかで、ET-1自身を過剰発現するマウスでは、大動脈・心・腎・肺などの器官でET-1の産生は約2〜4倍に増加しており、その発現はレポーター遺伝子による検討と同様主に血管壁に認められたが、一部腎尿細管や心筋にも発現が認められ、生体への遺伝子導入システムへの幅広い応用が期待された。このほか、同じ系でアドレノメデュリン過剰発現マウスの作成にも最近成功した。これらのマウスは、ET-1やアドレノメデュリンなどの血管作動性ペプチドの循環器疾患の病態生理における意義を明らかにする上で多くの情報を提供することが期待され、現在これらのマウスの解析を進めている。また、ET-1遺伝子プロモーターによる遺伝子発現系にテトラサイクリンによる遺伝子制御系を取り入れ、血管壁における遺伝子発現をON-OFFの調節ができるシステムを開発中である。これとともに、我々は平滑筋・心筋ミオシン重鎖遺伝子をクローニングし、それらのプロモーター領域のin vitroにおける組織特異的転写活性調節機構を明らかにしてきた。これらをレポーター遺伝子に連結した遺伝子コンストラクトを作成し、平滑筋や心筋に特異的な遺伝子発現をするトランスジェニックマウスの作成を試みている。さらに我々は、他の遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスの作成を継続するとともに、ウィルス系のベクターによる生体への遺伝子導入の系を用いた血管壁選択的な発現システムの確立について、他施設との共同研究などにより研究を進めている。
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