研究概要 |
神経発達障害仮説にもとづき、平成7年度は候補遺伝子として、神経成長因子ファミリー遺伝子群のニューロトロフィン-3(NT-3)遺伝子と脳由来成長因子(BDNF)遺伝子をとりあげた。そのうちNT-3遺伝子については、すでに先行研究において第一イントロン領域に2塩基繰り返し配列を発見し、これが精神分裂病と関連することをしめした。それにもとづきNT-3遺伝子の変異を検索した。すなわち一本鎖高次構造多型法と制限酵素断片長多型法を用いて、NT-3遺伝子の全アミノ酸コード領域(現在はまだ推定の第2エクソン)とプロモーター領域のAP-1結合部位およびTATAボックスを含む領域(第1エクソン,5'非翻訳領域も含む)の多型ないし変異を検索した。その結果、アミノ酸コード領域に3つの変異を見いだした。1つはGly-63がGlu-63に変わるミスセンス変異であり、他の2つはサイレント変異であった。(Pro-55とAsn65)。これとは別に、BDNF遺伝子についても検討した。Proeschel et al. (1992)にもとづいてプライマーを作成し、多型性を示すPCR産物を得たが、そのフラグメントサイズはProeschel et al. (1992)の報告とは異なり、210bp前後であった。そこでdirect sequenceとcloning sequenceを行った。その結果、報告されているCAの繰り返し配列の前に、GCの繰り返し配列(n=4-6)が挿入されていた。今後はこれらをさらに確認すると共に、精神分裂病との関連を検討したい。
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