研究概要 |
これまでグリオーマに於ける核内転写調節因子群の遺伝子変化と発がんとの関係を明らかにする目的で、培養グリオーマ株を対象にCDK抑制遺伝子群であるp53,p16,p15,p21遺伝子の検索を進めて来た。本年度はこれに引き続いてまず第一にこれらの遺伝子と最も密接に関与するRb遺伝子の解析を開始した。現在までにpolymorphic markerを用いた解析から70%例にLOHを示唆する所見を得ているが、目下更に遺伝子変異の検索および蛋白機能の検索へと研究を進めつつある。第2に新しいがん抑制遺伝子であるMMAC1/PTENの検索をおこなって来た。この遺伝子はCDK抑制との直接的な関係は不明であるがグリオーマ発がんあるいは悪性化に密接に関与するものと考えられる。グリオーマ培養株10株中5株に小欠失、、あるいはnonsense変異が、また他の1株では転写抑制が認められた。一方培養株の由来する原腫瘍の検索も行ってきているがp53変化は検索した5例中5例に、p16遺伝子変化は2例中2例に培養株と同一の変化を認めてきた。このMMAC1/PTENでも2例中2例に培養株と同一の変化を認め得た。したがってグリオーマ株でみられたこれら複数の遺伝子変化とその組み合わせは長期培養の過程で生じた人工産物ではなくて原腫瘍由来のものと考えられた。したがってこれらグリオーマ株を対象に更に詳細に遺伝子の解析を進めることは原腫瘍の実際の特性を知る上でも有用と思われた。
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