研究概要 |
1. グリオーマ株のMMACl/PTENがん抑制遺伝子の検索: 培養グリオーマ株10株を対象にMMACl/PTENがん抑制遺伝子の検索をおこなった。その結果、7例に変化を認めそのうち3例が3bp小欠失、1例がmissense変異、2例がtruncation変異、1例が転写blockであった。いずれの変異例、小欠失例でもSSCP解析でLOHが推定された。検索した2例では同一の変化が原腫瘍にも認められた。この結果およびこれまでのp53,p16,p15,Rb遺伝子の検索結果から、いずれの遺伝子もグリオーマ株の60-80%に異常を認め、その異常の組み合わせは株ごとに異なること、すなわち、グリオーマ株には遺伝子異常の上での多様性、個性がみられることが明確となった。 2. 新規polycomb群遺伝子の分離: polycomb群遺伝子は個体発生、分化に重要な役割をもつのみでなく発がんやアボトーシスに働く可能性が示唆されることから極めて重要な遺伝子群である。我々もラット脳のcDNA differential screeningの過程で新規polycomb群遺伝子(smrと仮称)を分離し、マウス、ヒトの対応遺伝子も分離した。染色体局在はradiation hybrid法で決定したが、マウスsmr遺伝子はマウス14番染色体に局在しており、ヒトの相同遺伝子は3番染色体に局在していた。この遺伝子はショウジョウバエのpolycomb遺伝子、lethal(3)malignant brain (l(3)mbt)遺伝子との間に明らかな構造上の類似性があることから、ヒトの脳腫瘍との関連、特に上記各種がん抑制遺伝子との関連で新しい研究の展開が期待され注目すべきと考えた。
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