研究概要 |
1. GFAP遺伝子に関する研究: ヒトGFAP遺伝子を単離しその塩基配列、exon-intron構造、promotor構造、転写開始点、染色体局在などを決定した。しかし、グリオーマのGFAP発現の多様性に関してはdifferential screening法にて多数の新規、既知遺伝子を単離したが、GFAP発現の多様性に直接連動する遺伝子の同定には到らなかった。 2. グリオーマのがん抑制遺伝子変化: グリオーマの多様性(個性)に関する検索はがん抑制遺伝子変化の側面からもおこない、グリオーマ組織、培養株に於ける遺伝子異常の実体を明らかにした。特に、グリオーマ細胞株のがん抑制遺伝子の検索は10株を対象にp53,p16,p15,p21,RbおよびMMACl/PTENについておこない、全ての遺伝子(p21以外)が60-80%の株で異常であること、異常は原腫瘍由来であること、そして、遺伝子異常の組み合わせでみると、それはそれぞれの株ごとに特異的であり、遺伝子異常に関する多様性(個性)が認められること、などを明らかにした。 3. 新規polycomb群遺伝子の単離: polycomb群遺伝子は個体発生、分化に重要な役割をもつのみでなく発がんやアポトーシスに働く可能性が示唆され注目されている。我々もラット脳のdifferential screeningの過程で新規polycomb群遺伝子(smrと仮称)を分離し、ヒトの対応遺伝子も分離した。この遺伝子はショウジョウバエのlethal(3)malignant brain tumor(1(3)mbt)遺伝子に類似性があることから、ヒトの脳腫瘍との関連、特に上記各種がん抑制遺伝子との関連で新しい研究の展開が期待され注目すべきと考えた。
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